僕は、これまで出会ってきた「人たらし」の方々に、その生き方に感動し、尊敬の念を抱いてきました。
そして、それぞれの「人たらし」が持つ魅力的な側面を取り上げて、自分でも出来るなら見習ってみたい。
さらには、僕のブログで紹介して、ブログを訪れる方々にも、この愛すべき「人たらしの方々」の生き方を是非学んで欲しいと願っています。
特に今の世の中で人間関係をうまく築けない、生きづらいと悩んでいる。
そういう人たちに是非読んでもらって、少しでも「生きるヒント」にしてほしい。
そんな思いを胸にこの人たらしシリーズを続けています。
目次
今回の番外編は、取引先の会長のお話です。
うちの会社が20年ほど前から取引を開始している専用事務機メーカー代理店のT会長です。
当時は、社長でした。
このT会長は、一代で専用事務機メーカーの販売店として南九州の販売シェア50%近くを占める規模に育て上げた実績を持つやり手の会長です。
はじめての商談で魅了された満面の笑顔そして情熱のほとばしり
20年ほど前、わが社が必要とする業務用製品の提案が2社よりありました。
同等の機能性をもち、価格的にも大差なく、アフター、メンテナンス面もそれほど違いがないと思われる。
そういう場合、あなたなら何を決め手に採用しますか?
一般論としては、
1.2社を競合させて、さらに値引きを勝ち取る。
2.アフター、メンテナンスが行き届いた方を採用する。
3.交渉窓口担当者の信頼度で判断する。
だいたいこの3点に集約されると思います。
いかがですか?
これまでの僕の採用基準もこの3点に基づいて実践していました。
特に3の担当者の信頼性というのは、とても大事なんですが、しょせんビジネスですから、たいてい相手の腹の裏側も透けて見えてくるわけです。
あからさままに営業成績獲得のためのトークと判るタイプから、なかなか腹のうちは、見せずに巧みに自社製品の優位性を畳みかけてくるタイプ。
いろんな営業マンタイプありますが、こちらとしてもテークアンドギブの関係ですから、そこは、割り切り、それなりの落としどころを見つけて、採用を決めていきます。
ところが、T会長(当時社長)の場合は、この3の信頼度の部分が並外れていたのです。
僕よりかなりの年上なのですが、初対面から満面の笑みを浮かべ、こちらの顔をきちんと見据えてあいさつをされました。
この方法は、自分の行動、言動が実践と理論にきちんと完全武装された人に見られるやり方です。
表面だけを繕った薄っぺらい人には、けっして出来るものではありません。
まあこれくらいは、時々見受けるパターンで驚くこともないのですが、このT会長の場合、自社の製品のプレゼンをこれでもか!これでもか!!というくらい熱すぎるくらいの情熱をもって行ってくれたのです。
よっぽど自信があったのか、その言葉には、ビジネスマンというより、あたかも自分で製品開発したような語り口で、自信作だから是非使って欲しい、絶対に大きな成果をもたらすはず、
そんな熱情にあふれたプレゼンを、とても丁寧に、非常に分かりやすく、とうとうと時間をかけて僕に説明してくれました。
そういう記憶があります。
もちろん、T会長が開発した製品ではないのですが、それくらい自社の扱う製品に愛情と自信があるのだろうという思いが、ビシビシこちらに伝わって来たのを憶えています。
そんなT会長の情熱の入りまくったプレゼンに
「すごいなあこの人。尋常じゃないくらい自社製品を知り尽くして、愛情と自信をもっているんだなあ」
そんな印象をもちました。
これまで、ありきたりの営業トークでしか商談を経験したことがなかった僕には、ある意味、T会長の熱い情熱発散型がショックであり、新鮮でした。
結局、この商談では、T会長の薦める製品が、とんとん拍子に採用が決まっていったのでした。
実際、製品採用した導入後についても、T会長のプレゼンにあった通り、わが社での評判も上々で、アフターメンテナンスについても、レベルの高いものを提供してくれたのは、いうまでもありません。
T会長の人たらしのポイント
ここでT会長がなぜ「人たらし」だったのかをおさらいします。
笑顔と自信たっぷりの表情でこちらを魅了する
1.初対面の商談でも緊張感もなく、満面の笑顔であいさつをしてくる。
2.きちんと相手の目を見据えて、はっきりとした口調で自信をもって話をしてくる。
まずは、この2点に代表されます。
これがまさしく「人たらし」の特徴です。
僕らは、自信たっぷりの人には、たいてい弱いです。
話をよどみなく、理路整然されると、たいてい信じてしまいます。
それがフレンドリーに、きちんとこちらの目を見据えて、分かりやすい語り口でされたとしたら、たいていの場合、相手の術中にはまってしまうのです。
その場限りではない一貫した姿勢
そして、この態度や言動は、その後のお付き合いのなかでも、ずっと継続されるのです。
20年を経た今でも、T会長のうちの会社、僕自身への対応は、なんら変わることは、ないのです。
1年のうち数回しか顔を合わすことはないのですが、毎回、僕の顔を見るや否や、満面の笑顔で僕に駆け寄ってきて、両手で握手してくれます。
「にしじゅんさん元気にしておられますか?」
と、
そのたびに、単純思考の僕を、
「ほんとこのT会長は、根っからのいい人なんだなあ(*^_^*)」という気持にさせてくれるのです。
そんなT会長の一貫した行動スタイルが、人としての信用を築き、尊敬に値する「人たらし」として僕の中で確立されていきました。
部下に怒ったことがない?!
今は、会長となり、直接商談をすることもなくなりました。
営業部長を務める部下のK氏ともっぱら商談を行っています。
その時のK氏との会話の中で出たエピソードにも「人たらし」としての特徴的一コマがありました。
僕「どうですか?T会長は、社内では、厳しいですか?」
K部長「いやそれが全然です。僕は、入社して20年くらいになるのですけど、実は、一度も怒られたことがないのです(*^_^*)」
僕「えっ、ほんとですか?でもそれじゃ社内の風紀が、ゆるくなってしまって、業績上がらないんじゃないですか?」
K部長「それが逆なんです。T会長は、創業からずっと、怒るより、ほめて育てるという姿勢で一貫しています。その方が、伸び伸び仕事が出来るはずと常々いっておられます」
僕「なるほど、よく分かりました」
20年を経て、初めて知ったその社内事情に驚きました。
でもよく考えたら、T会長のそういう経営スタイルそのものが、「人たらし」の人心掌握術なのです。
そのことが、明確に分かった瞬間でもありました。
まとめ
20年間にわたるT会長とのお付き合いを超簡略化して、「人たらし」的側面に絞って、まとめてみました。
やっぱりこんな風に文章にまとめてみると、まさしく人たらしですね。
そして愛すべき、尊敬に値する「人たらし」です。
1.分け隔てなく人と笑顔で接する。
2.人を褒めて育てる。
この2点を実践するだけでもビジネスや、または、オフタイムにおいても愛すべき人間関係が作れることに気付かさせられます。
これからも日々勉強です。
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